エニグマ奇襲指令(著:マイケル・バー=ゾウハー)
2016.01.11
第二次世界大戦、ドイツ占領下のフランスでナチスの手からエニグマと呼ばれる秘密暗号機を奪取し、連合国イギリスへ持ち帰る……。そんなムチャクチャかつ明瞭な使命を帯びた、“男爵”を自称する主人公のスパイ小説であり、冒険小説です。
エニグマといえば、
ナチス・ドイツの暗号機エニグマ実機、謎の人物が約2900万円で落札 – Engadget Japanese
という記事を思い出しますが、実際の中身については『暗号解読』なんかを読むといいのではないかと思います。
主人公は飄々とした捉えどころのないキャラクターでユーモアに富んだところがありますが、あまりその性格を作中で生かせていない感じがあります。戦時下、秘密警察の闊歩する世で役に立つのは彼の性格と彼の父親によって築かれた人脈ということでしょうか。
設定された時代と背景は何人にも恐怖と悲劇をもたらし、緊張を強いるものになっています。
そういった、なにが起きるかわからないギリギリの展開が続きますから、読者は飽きずに読み進められると思います。
縫い針より大きい大国同士が針に糸を通す以上の繊細さで挑む情報戦…という要素も薄いので個人的にはとても読みやすい本でした。
続編を期待しちゃうのは野暮なんですかね。
それだけ魅力のある一冊だと思います。