日記

追跡者たち 上・下(著:デオン・メイヤー)

2016.02.18

“何でも相談して”と言いながら、誰も手を差し伸べようとする勇気は持ち合わせていないのだ。
上巻・P354

上下巻の長編小説です。
「ミステリの新たなる地平!」だとか、偉大なアドヴェンチャー小説などと言われると、どんなものか気になってしまうものですが、なかなかおもしろかったです。

本作は複数の視点、事象から構成されており、一見無関係に思える出来事もどこかで繋がっている…そんなオムニバス的な作品に仕上がっています。
読んでいる間は「えっ、あの人どうなったの?」と心配になるくらいでしたが、しっかりとオチはありますのでご安心を(と書くのもネタバレになるんじゃないかと心配するほど各々の独立性は高いです)。

とはいえ、少し読みづらいというか、最初の主人公であるミラが離婚、再就職をして南アフリカ大統領府の情報部で報告書をまとめる仕事をしている間の描写はとても退屈です。
それは私自身が舞台となっている南アフリカの事情に非常に疎いというのもあると思うのですが…。
盗聴記録と思しきレポートやミラ自身の日記が時系列を無視して挿入されているのもあってか、登場人物の相関図を頭に思い描くのに苦労します。一応それらは丁寧に説明されているので、そこまで苦心するというものでもないとは思います。

そして上巻の後半から始まる、クロサイの輸入にまつわる話の辺りから面白くなってきます。一応前半部分も手に汗握るマイク設置作業など、ギリギリのスリルをとてもよく表現している場面はあります。
下巻までくれば、後はすんなり読み進めることが出来ると思います。謎が解き明かされていく中で、それまで説明された、あるいは起きた様々な事象がつながっていく感覚は気持ちが良いです。

欺く者は、きまってそれ以上の行いに手を染めているものなのだ。
下巻・P378

よくここまでまとめたと感心するほど作品の完成度が高いために、あまり上手い感想を書けないのがもどかしいのですが、読み応えのある作品です。

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