ただ、それだけでよかったんです(著:松村涼哉)
2016.03.21
一個前の感想もそうですが、『第22回 電撃小説大賞 大賞受賞作』などと金色の帯で装丁してあれば、権力におもねり権威にかしずく私としては手に取るのもやむなしといったところです。
ですが、よく見ると『鎌池和馬大推薦!!!』と書いてありました。いや、別に含みがあるわけではありません。ライトノベル業界では確固たる地位を築いているであろう鎌池先生の推奨ならさぞ…えーと、その、ヘヴィーオブジェクトのアニメ面白いですよね。うん。
内容は…なんと言えばいいんでしょうか、家庭環境と教育制度、思春期の複雑な人間関係が合わさり引き起こされた悲劇を語る独白形式の小説です。
構成や展開に不満はありませんが、信頼できない語り手が好きではない人にはウケが悪いかもしれません。また、登場人物への共感が難しくオチもスッキリしません。
とはいえ、シリーズが続くような前提で売れ筋を意識した作品が挙がるより、より電撃小説大賞っぽい作品じゃないかな?と思いました。
本作のような異世界異文化異能力のない作品がもっと増えればいいなと思うんですけど、難しいのか、私が見つけられないだけなのか。
少しファンタジー要素があってもいいので、『タイム・リープ―あしたはきのう』とか、『紫色のクオリア』みたいなライトノベルが定期的に出てきたら泣いて喜びます。傲慢すぎますか。