冠絶の姫王と召喚騎士(著:宮沢周)
主人公の属性の一つに、『家族に凄い人物がいる』というものがあります。
それは、主人公を苦しめる存在であったり、特に物語に関わってくることのない自由なキャラであったり、大切な場面で助けてくれたりする…わけですが、強い存在というものを作劇の中で活かすのはなかなか難しいのではないかと感じるところです。
この作品は、どこか遠くの王国の姫同士の覇権争いに巻き込まれる主人公の活躍を描いた……具体的にいうと、今期アニメで放送中の『魔装学園H×H』よろしく、主人公が回復ユニットとして活躍しそうな物語です。
まあ、Fateとかでも、エッチなことをするのが一番魔力みたいなそんなすごいパワーを供給しやすいとか、そんな感じですし……いいんじゃないですか。
ヒロインと主人公で想定された主従が逆転しているというのも、昨今ではわりとある設定のような気がします。
主人公には姉がおり、主人公自身の特異体質や平凡な日常を望む心情にとても影響を与えているのですが、この設定はいらないんじゃないかっていうくらい、前半中盤の展開は退屈というか、読んでいてストレスが溜まります。
それも当然で、人違いから命を張る戦いに巻き込まれては、ヒロインである姫に主従を迫られ、半ば強引に事を進められれば主人公でなくとも反感を覚えるのは当然だと思います。
もちろん、そんな日常の中で姫に対して心を開きかけるシーンもなくはありませんが、少なすぎます。
そんな日常を経て、ラストバトルで満身創痍のピンチになったからって、急に(私はそう感じました)主人公が「俺はお前に協力する。」なんて言われても、それに至る積み重ねをほとん感じないので、読んでいてまったく心に響きません。
とは言え、ラストの展開はとてもいいです。主人公も熱く、二人のお姫様も可愛い。問題は、そこに至る経緯です。
問題といえば、幼なじみの扱いがひどすぎるので、これも必要あったのかなという感じです。
ところで、股間のことを『腰にある第二の心臓(P129)』と表現したのはとても面白いと思いました。