デュアル・イレイザー(著:折口良乃)
タイトルでもある『デュアル・イレイザー』という対戦アクションゲームを題材ににした作品です。
『イレイザー』と呼ばれるフィギュアを実際に戦わせる設定はガンダムビルドファイターズを彷彿とさせますが、こちらの作品が先発です。
また、ロボットの操縦は二人乗りの専用筐体(昔ゲーセンであった戦場の絆みたいなイメージでしょうか)で行うのが基本のようで、ソロプレイが好きな私としては実際にあってもあんまりやる気はしないなあという感じです。
おそらく二人乗りという設定は作劇上の都合なのでしょう、一人乗りで全一の実力を誇るヒロインの後部座席に主人公が乗り込むというのがストーリーの重要な流れです。
そして、このヒロインはある理由からゲームでの戦いに勝ち続けなければならないのですが、そういった事情に関わる上でも主人公とヒロインが一緒に戦うというのは当然の展開だと思います。
この作品は、ほとんどが主人公の一人称で語られていくのですが、口語調と文語調というか、地の文に崩した表現と堅めの表現が混ざっているため、状況を説明しているのか心情の描写なのか判然とせず、とても読みにくいです。
それに合わせて主人公の性格は控えめに言っても傲岸不遜で、強気の言動や、ヒロインのことは理解できないと距離を置くような発言をしておきながら、「俺は役立たずだと理解した」なんて言いつつ関わろうとする心理は読んでいて非常にストレスが貯まります。
ヒロインの生い立ちや戦う理由、それらに関わる心理も当然、主人公の一人称によって語られるので、キャラクターの魅力がほとんど伝わってきません。
伝わってこないのは主人公も含めてキャラクターの造形に問題があると思います。
とくに描写が足りないというわけではありませんが、私としては主人公の内面なんて知りたくもねーよって感じでした。これは好みの問題かもしれませんね。
これなら三人称視点のほうがまだ良かったかも…。
とはいえ、戦闘描写は分かりやすいほうだと思いました。敵側の如何にも悪役めいた台詞もなかなかいいものです。
ただ、ヒロインの護衛が都合二人しかいないってのはどうなんでしょう…イレイザーに細工をされるとあっさりバランスが崩壊するのもどうかと思いますし、対戦中に設定変更っていうのも展開としては熱いんですけどそれって他のプレイヤーも同じことができるかもしれませんよねって感じですし、筐体から出てるケーブルにカッターで細工されたらアウトってのも…謎の技術で実現されている文句のわりにシステム脆弱すぎない? というのが正直な感想です。