日記?感想?

滝山コミューン一九七四(著:原武史)

2017.02.07

少し前に話題になったゴルスタ騒動で、関連した記事についていたコメントで紹介されていた本です。

Wikipediaによれば、コミューンとは『地方自治体の最小単位』とありますが、この本で言うコミューンとは社会運動における共同体を指すもののようです。
ある種のディストピアだとか、いまでは廃れてしまった社会体制、近年ではあまり聞かれなくなった思想などを想像せずにはいられない、とても興味を惹かれる素晴らしいタイトルだと思います。

この本は著者の小学校時代に起こった出来事を、当時の資料や関係者の証言から紐解いていく回顧録的な形式となっています。
著者や同級生の家庭環境、社会情勢、滝山団地という陸の孤島の特異性、学級集団が目指すもの…実際に著者が『滝山コミューン』と呼ぶ共同体が形成されたのは全体から見るとほんのひと時であるように思いますが、そこに至る経緯と引用を交えた考察には十分な説得力を感じます。

一方で、著者自らが言うように各々の情景に対する著者の主観が色濃く出ているのも確かです。偽らざる真実を詳らかにするという姿勢は、一方で客観的な見方を排してしまうジレンマを孕んだものになっています。
とはいえ、蓋然性が失われているかというとそうでもなく、ドキュメンタリーとして良質な描写がなされています。

気になるところといえば、当事者への取材や資料などの協力のわりに、著者以外の関係者が当時のことをどう考えているのか殆ど語られないところです。
1974年度後期の代表児童委員長を務めた中村美由紀が著者に対してトラウマという言葉を使いながら語り、涙を流した(P.296)、著者に強烈な印象を与えた林間学校の運営委員長を務めた小林次郎が控えめに当時の心境をコメントする(P.236)など簡潔なものにとどまっています。

また、事実の羅列に対して、実際起こったことに対する描写がところどころ曖昧で憶測として記述されており、例えば前述の中村美由紀にはおそらく相当な取材を行ったはずであるのに、著者に対する『追求』の場で”ただこのとき、片山先生や中村美由紀がいたかどうかははっきりしない(P.298)”とするなど、どういった理由ではっきりしないのか、判然としない箇所があるのも確かです。

取材対象の個人情報への配慮や各人の記憶の欠如(P.324)が大きな理由だと思われますが、私が読んでいて足りないと思う理由に、一つ著者と目的の違いがあるのではと考えました。
読者である私は物語としてのディテールをみるが、しかし著者にとっては懐かしい記憶の一部であるということです。そこには書き手と受け手の根本的な齟齬があり、こういった面を指して「欠陥」を抱えていること(P.237)を認めているのではないかと感じました。

しかし、著者がかつて住んでいた地に自ら足を運んで感じた一つ一つの情景、当時の膨大な資料によって補強される思い出の数々に偽りはなく、それらが真摯に綴られた文章を読むに、この本の読者は、そういった思いに感化し自らの在りし日を想起せずにはいられない、そんなノスタルジーを内包した一冊です。

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異世界詐欺師のなんちゃって経営術2(コンサルティング2(著:宮地拓海)

2017.01.29

あけましてのおめでとうと申し上げるには少々日が経ちすぎたという気もする今日このごろですが、いかがお過ごしでしょうか。
なんだか読書ペースが下がっておりますが今年もぼちぼち読んでいければと思います。

前回の続きとなるわけですが、今回も『会話記録カンバセーション・レコード』を駆使して主人公たちに有利な契約を取りに行ったり、表紙において頭の上にジネットちゃんのおっぱいが乗っている新キャラも登場し賑やかになっていく、そんなお話です。

ニワトリに卵を産ませるというくだりは、なんか最近似た展開を読んだな…という感じなのですが、ネタがかぶるってこともあるでしょう。
よく考えて見れば、この作品も『グルメモノ』的要素のある作品です。

昨年アニサキスに対するアレルギーがあることが判明した私としては作中で「鮭はうまい!」と言われると複雑な気分なのですが、たとえ異世界でも自分の望む食事ができたら、それはとても素晴らしいことだと思うわけです。
ちなみに、最近は魚を避けていても蕁麻疹が出たりするので、正直なにが原因なのかが分かりません。実はダニなのかもしれませんし、(それはないと思うのですが)ストレスなのかもしれません。
具合が悪くならなければいいな…という感じです。

とにかく、経歴のわりには結構甘々な主人公の機転によって少しずつ軌道に乗ってきた『陽だまり亭』の今後が楽しみです。

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異世界ですが魔物栽培しています。(著:雪月花)

2016.12.20

お久しぶりの読書(ラノベだって立派な読書だと唱えたい派)です。

全ての魔物が種から生まれる異世界に転移した主人公がハーレムを築きながら崩壊の危機にある世界を救う…そんなお話です。
私はあまり読んでいませんが、最近良く見る『異世界グルメモノ』ってやつでしょうか。

特にグルメモノでなくとも、異世界系作品でよく持ち込まれるのが食ですね。
作りたいものに対して、だいたい現地で採れるもので代用が効くなんて都合の良さもお約束。
持ち込むものが著者によって違うのが面白いところです。

登場キャラが結構多いのですが、設定がわかりやすくテンポもいいためとても読みやすい作品です。

しかし、魔物の栽培についてはいいとして、醤油だのお茶をテレビで観たくらいの知識でつくれる主人公すげーなって思いました。

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魔法学園〈エステリオ〉の管理人 ~最強勇者だった俺の美少女コーチングライフ~(原雷火)

2016.10.31

1巻には巻数の表記がなく、2巻にはあります。
大体読めば分かるかと思うのですが、上下巻構成となっています。

かつて勇者だった主人公が落ちこぼれクラスの女の子たちを――って、親切にもタイトルに書いてありますね。説明不要の教師モノです。
一応転生主人公なのですが、読んだ限りではピザなどの新しい文化をもたらしたり、主人公が勇者として成長する助けになった、という以上の関わりはなさそうです。
主人公が持ち込んだ文化が浸透したおかげで剣と魔法の世界をより読者に理解しやすい形にできるということでしょうか。

設定も展開も平易で読みやすく、ヒロインの成長過程も丁寧に描写されています。
読んでいると、ところどころの描写になんとなく『ときメモ』のようなアドベンチャーゲームをプレイしているよな印象を受けます。

ただ、地の文の描写と台詞の前後が逆になっている箇所が多く、多少の読みづらさはあると思います。
特に続きがあるような記述はないのですが、第1部完とあるので、まだ先はあるのでしょう。

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祓魔学園ふつまがくえん背教者ミトラルカ ―祭壇の聖女―(著:三河ごーすと)

2016.10.23

一ヶ月以上、一冊も本を読んでいませんでしたが、久しぶりに積み本を消化しました。
なんと言えばいいんでしょうか、ワケあり主人公とワケありヒロインが頑張る…『異端モノ』とでも呼びましょうか。

祓魔師は契約精霊を呼び出して悪魔契約者と戦う聖職者、とありますが、こういったお話のご多分に漏れず、その実態は誰かの犠牲によって成り立っているというのが物語の重要な要素です。
展開も設定もわかりやすく、読みやすいとは思うのですが、若干の都合の良さは否めないかなと思いました。

主人公はどちらかと言うと一匹狼で、人の考えていることなど気にせずズケズケとモノを言う性格…巷の主人公属性に溢れるところのデリカシー皆無マンなわけなのですが、こういった性格の主人公って、実際読者受けするものなんでしょうか?
正直、友達にはなれそうにないタイプなのですが、需要があるのか、物語を進める上で欠かせない要素なのか、なにかしらの理由はあるんでしょう。

とりあえず私もミトラちゃんを教祖様として毎日拝めるのなら入信するのもやむなしといったところです。

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