ゴブリンスレイヤー(著:蝸牛くも)
何やら評判のいい作品なので買ってみました。
ファンタジーやラノベとしてはごくありふれた世界観、設定、展開だと思います。
しかし、主人公の「小鬼を殺す者」としての生き様は異様なほど徹底されており、正気の沙汰ではありません。
ゴブリンを討伐することは冒険者の描く夢はとはかけ離れた陰惨で醜悪な汚れ仕事を請け負うということであり、だれもやろうとはしない……。こっちで言うところの3Kみたいなやつですかね。
そんなゴブリン討伐を片っ端から請けてはゴブリンを殺しまくる主人公と、その周囲の人々とのお話です。
特徴的なのは、キャラクターには特に名前がないというところでしょうか。基本的に役職、パーティでの役割、またはあだ名のようなもので会話が成立しています。
こういった構成で著者の文章力が発揮されており、とても読みやすく描写も丁寧です。
神も認めるサイコロを振らせない男、ゴブリンスレイヤーの活躍が気になるところです。
セーブ&ロードのできる宿屋さん2 ~カンスト転生者が宿屋で新人育成を始めたようです~(著:稲荷竜)
いつ買ったのかは定かではありませんが、気付いたら家に置いてありました。
新キャラを鍛えたり、1巻で登場したキャラがさらに強くなったり、同時に主人公自身の物語も進みます。
相変わらず死しても屍を拾ってくれるセーブポイントのおかげで、女の子たちは心をちょっぴり減らしつつもメキメキと強くなっていきます。
物語の進行が早いのはいいのですが、実際にどんなダンジョンだったのか、ダンジョンマスターをどう倒したのかなど、修行時の描写は殆どありません。
少し物足りない感じですが、読者が退屈になると判断したのかもしれません。
それにしても、後半のエルフにまつわるお話はちょっと展開が性急すぎる気がします。
この作品の魅力は主人公の笑顔に自らの常識を疑ってしまう周囲の人々との掛け合いや心理描写にあると思いますので、そういった点が増えるといいかな、なんて。
ヴァイオレット・エヴァーガーデン 上・下(著:暁佳奈)
上下読み終わるのにかなり時間がかかってしまいました。
金髪碧眼の美女、自動手記人形のヴァイオレット・エヴァーガーデンが世の男どもを盲目にしていくお話です。
世界観、キャラクターの心情など、綿密な描写がされており、読み応えのある内容になっています。
……ですが、正直に言うと設定が深いようで浅く、描写がくどいと感じます。
また、仕方ないとはいえヴァイオレットの特異性ゆえか登場する男たちは軒並み女々しい奴らばっかりです。
つまらないというわけではありませんが、人に勧められるかというと後述する理由もあってNoです。
上巻のお話必要? なんて思ったりもしますが、そのおかげで下巻は面白いように感じるような気もするので難しいところです。
設定や描写はさておいて、キャラクターはそれぞれ個性があり魅力がありますので、そういった点はとてもいいと思います。
というかですね、この本、売っていません。どこにも。
秋葉原の本屋をまわって下巻しか買えないってどういうことですかね。
今は在庫があるようなので、公式通販で買いましょう。
りゅうおうのおしごと!7(著:白鳥士郎)
今回は主人公の師匠である清滝鋼介九段に焦点を当てたお話です。
年齢から来る衰えや降級のプレッシャー、自らが切磋琢磨していた頃と大きく変わってしまった将棋界と、色々なことから逃げがちだった師匠がおじさんパワーで踏ん張る展開が見どころです。
一方で、主人公やその弟子たちも勝ったり負けたりの非常に内容の濃い一冊なのですが、やはり日常パートが少ないような気も……します。
アニメ化もして話題になっているようですので、あまり好きではありませんが7.5巻みたいな中間のお話があるといいかもしれません(巻末の感想戦が結構面白いので、そういった短編にも期待が持てると思います)。
りゅうおうのおしごと!6(著:白鳥士郎)
主人公の姉弟子、空銀子が決意を新たに将棋の道を邁進する…そんなお話です。
弟子の女流デビューのお祝いに棋具をプレゼントしたり、主人公を取り巻く女性たちの仁義無き(?)戦いも見どころです。
キャラクターの立ち位置として、銀子は報われない幼馴染、ということになりそうなのですが、その悲壮感を銀子の視点で語らせる著者の気迫の篭った地の文にも注目です。
この作品ではかねてから『勝負の世界の厳しさ』を各々が訴えているわけですが、これからもより一層厳しい戦いが待ち受けていそうです。