学戦都市アスタリスク 02.銀綺覚醒(著:三屋咲ゆう)
2巻です。内外のイベントを順調に消化しつつ、表紙にも描かれている年下のキャラクターをハーレムに加える、そんなお話です。
既視感の強い展開やキャラクターなど、特に真新しい点は皆無と言っても過言ではありませんが、読者の”なにか”を想起させるライトノベル的手法がまあまあ効いていて、結構面白いです。
次巻のカタルシスにも期待しつつ。
クビキリサイクル 青色サヴァンと戯言遣い(著:西尾維新)
アスタリスクの2巻を続けて読むのもあれなので、言わずと知れた西尾維新先生のデビュー作を読んでみました。
私はあまり推理小説なるものを読んだことがないので、足りない知識から近いものを挙げるとするならば『そして誰もいなくなった』でしょうか(違うって言われそうですけど)…古典的な閉鎖・密室モノになるんじゃないかと思います。
関係無いですが、上に挙げたアガサ・クリスティーの新訳、非常に無粋な前説のおかげで読んでいて興が削がれたのであまりオススメしません。あんな解説付けるんだったらナウい現代語に訳さなくてもいいじゃんって感じです。
そんなわけで、作中で使われているトリックは複雑怪奇というわけでもなく、お約束的な展開を見せますので、推理自体にはそれほど意味は無いのかもしれません。
私はやはり西尾先生といえば騙し合いや駆け引きなどのキャラクター同士の掛け合いが醍醐味だと思うのですが、本作でももちろん、その筆致・構成力が遺憾なく発揮されており、西尾維新の西尾維新たる所以はデビューの時から変わらないものだなと思いました。
そういったところで舞台装置としての凡百なトリックも、読者を心理的に誘導するための手段の一つなのかな?と思ったりもします。あんまり難しいことは分かりませんけれども。
メディアミックスのお陰でウケのいい『化物語』や、気づいたら凄いシリーズになってた『悲鳴伝』、そして本作品もですが、登場人物の偏屈さは相当なものがあり、あまり共感出来ません。
共感できないからなんだよって気もしますが…読者は常に西尾作品という檻の外から彼ら珍獣を眺めることができる、そんなところが魅力だと思います。戯言だけどね。
学戦都市アスタリスク 01.姫焔邂逅(著:三屋咲ゆう)
10月より放送が開始されたアニメの原作小説になります。
1話を観た限りだと、「まーたテンプレラノベアニメか」とか「なんか綴りそうな主人公だな」などと思ったものですが、まさか本棚に原作一巻が眠っているとは思いませんでした…。
購入した記憶は全くないのですが、「最高峰の学園バトルエンタメ」だの「これぞ“疾走するカタルシス”!」といったキャッチコピーに騙されたのかもしれません。
とは言え、なかなかどうして面白かったです。
用語があまり頭に入ってこない感じがしますが、「ルークス」くらいは覚えておくと読みやすくなると思います。
設定も展開も、王道をなぞっている印象です。
新人類の登場と権力機構の変化、舞台となる都市の機能、主人公とヒロインの邂逅、主人公や周囲を取り巻く力と謎――。
疾走するカタルシスに偽りなし、と言ったところでしょうか。
そこそこ続きが気になる終わり方でしたので、次の巻も買ってみようかと思います。
破剣クロニクル(著:すぎやまリュウ)
ちょっと前はMF文庫の本ばかりを読んでいたのですが、色々なレーベルが出てきた中で、気付けばこの緑の背表紙の本を読むのは久しぶりな気がします。
内容としてはMF文庫らしいファンタジー擬人化魔剣モノのライトノベルです。
☆画野朗先生のふわふわしたかわいい系のイラストと、作品の世界観は非常にマッチしていると思います。
登場する女の子たちはそのイラストの力もあってか、とても可愛いです。
魔剣である彼女たちの髪を洗うことで、刃を研ぐことができる…シチュエーションとしてはわかりやすく、よく出来ていると思います。
が、描写が丁寧すぎるのか、一向に話が進んだ感じがしないというのが正直なところです。仲間も増えて、目的も出来て…と一応オチはついていますがエピーローグ的なお話を引き伸ばした感が否めません。
ほとんど必要のない地の文や掛け合いを読まされている印象が強く、また一つのセンテンスに複数の事象が混在しているためか意味を汲み取りにくいです。
というわけで、ストーリーが全体的に冗長な描写で展開されており、その展開自体も特に驚きや緊張感を持つものでもなく、少し退屈です。
主人公の女の子に対する反応が『ToLOVEる』のリトよろしく、変わり映えしないのも飽きが来る一因かもしれません。ここらへんは好みもあるとは思いますが…。
分かりやすい設定と、魅力のあるキャラクターが構築できているだけに、惜しいところです。
で、続巻でシオンちゃんは救済されます…よね?
戦艦学園のグラムリッター 問題児な魔道士と愚劣な指導官(著:手島史詞)
最近だと、『空戦魔導師候補生の教官』や『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』などの刊行で盛り上がるかと思われた指導教官モノ(?)ですが、あまり増えていないような気が…そんなライトノベルです。
『E.G.コンバット』に代表されるこの手の作品は私が好きなジャンルの一つです。
実力のある主人公が、事故やライバルに蹴落とされたりなどして前線を離脱…紆余曲折を経て一癖も二癖もある生徒を教えることになり、様々な経験を積みながら彼らを導いていく。
主人公の奇抜な指導方法、生徒の成長過程、驚きの結果。そういったものを楽しむジャンルだと思います。
設定としてはIS+空戦みたいな感じでしょうか。ISよりはファンタジー寄り、空戦よりは権力支配の構造が軍事色の強いものとなっている印象です。
そして、ガルパンやラブライブといった…そんな感じの要素も入っていて、作品としては色々広がりがありそうなものになっています。
と、類似の作品が思い浮かぶ中で、作品の独自性を担保するような面白さがあるかというと…。
この巻の内容は殆ど王道というような展開なので、あまり驚きはありませんが、そういった展開は消化しきった感がありますので、続巻に期待ということで。
カスカベアキラ先生のイラストを楽しむのもアリです。