ダウトコール ―三流作家と薄幸執事の超能力詐称事件特別対策―
知力と機転を尽くして欺瞞を破る、そんな作品です。
主人公が恐ろしいストーカーから逃げ、お嬢様の通う学園に雪崩れ込む非日常の連続は一見雑なようですが、構成自体は良く出来ていると思います。
「作家ってよく自殺するイメージがあるんだけど、お前はしないのか?」
P154
ただし、自身の不幸体質や宗教団体を壊滅させた杵柄などで雑学に詳しい主人公と、文学を愛するヒロインの皮肉たっぷりの掛け合いがほとんど全編にわたって展開されているため、すこしクドいと感じるかもしれません。
絵はとても良いです。挿絵の茜ちゃんが可愛いのはとてもグッドです。
続きがないのは惜しいような気もしますが、仕方がないのでしょう。
風に舞う鎧姫(著:小山タケル)
小難しく、複雑な読み物もいいものですが、こういったちょっとおバカなコメディだってライトノベルの一ジャンルだと思うわけです。
女子校である志弦学園に編入することになってしまった主人公が騎士として女の子のスカートを脱がしまくる…そんな作品です。
べつに主人公が脱がせなくとも、誰かが誰かのスカートを脱がせばラッキーでパンツを拝めますし、主人公の力が暴走すればラッキーで幼なじみの豊満なおっぱい(表紙絵だけでみると魔乳の部類ですねぇ?これは)を視姦することもできるわけです。天国かよ。
主人公にスカートを穿かせるところなど、展開はやや雑で強引な印象ですが、そんなことは関係ありません。
王道展開でツボを抑えた一冊に仕上がっておりますので、なにかに疲れてしまった時に読めば桃色の情景がスゥッと頭のなかに描かれて救いを得られるに違いありません。
化魂ムジナリズム(著:頂生崇深)
伝奇モノというジャンルは有名な物以外はわりと少ない気がするのですが、私が知らないだけで、やはりあるところにはあるんでしょう。
とは言っても、この手の作品は著者の技倆が試されるイメージがあります。
タイトルにもある化魂によって非日常に巻き込まれてしまった主人公の成長物語というところでしょうか。
ある程度覚悟が決まれば、特に訓練しなくても、化魂の力を存分に発揮できるようです。
設定もわかりやすく文章も巧みで、雰囲気がありとても読み進めやすいのですが、人間関係や主人公たちの性格、葛藤などは少しモヤっとするというか、はっきりしないところがあるように思います。
脅威に対する対処がほとんど受けの姿勢になりそうですので、この先も安心できない展開が続きそうです。
家守ちゃんかわいい。
塔京ソウルウィザーズ(著:愛染猫太郎)
一部で話題になった本作ですが、なんか買ってました。
多分表紙買いしたんだと思います。
設定は、スチームパンクというわけではありませんが、SFによくある忍者や侍的なものが蔓延る退廃的な近未来の日本と言った趣です。
やたら用語や固有名詞が頻出しますが、世界観は良く出来ており、それほど複雑といった印象は受けませんでした。
それよりも、登場人物が少ない割にみんなやけに真面目すぎるのか人間関係にとても緊張感があります。
人工的な知能が自我を持ち成長するというのは永遠のテーマじゃないかと思うわけですが、それが魂のない人間の器に宿るなんて、とてもロマンがあっていいなと思いました。
ところでこの作品、続き出てないんですね…。
完全な憶測でしかありませんが、巷で言われているように、著者にはなんら落ち度がないのに作品と著者の芽を潰されているのだとしたらとても悲しいことだと思います。
その原因がネットでの工作だなんて言ったら非常にくだらんっちゅーわけです。恥ずかしさで言えば杉某先生だって今もちゃんと活動してるわけですし、氏の所業に比べたら、たかがステマぐらいで騒ぎすぎなんですよ。
著者は名前を変えて活動している…なんてのはありそうですけどね。
三木氏独立しちゃったし、続巻に関してはわりと絶望感があると思います。
扉の魔術師の召喚契約 -その少女、最強につき-(著:空埜一樹)
異世界召喚、ダブル主人公モノでしょうか。
一流魔術師のロイ=シュトラスは自身の勝手な理由によりロイにとっての異世界である日本から雛菊アヤメを召喚。日本にアヤメを帰すために二人で力を合わせて戦う。そんな作品です。
地の文の人称が曖昧なためダブル主人公だと勝手に思いました。ココらへんは著者がどういった意図で執筆してるのかを読み取ることは出来なかったのですが、あまり深くは考えられていないような気もします。
…一度雛菊アヤメという人間を分解し、こちら側のモノとして少しずつ造り直しているということと同じであった…
P156
ロイが使う物質転移魔法についての解説を読んでいると、昔『宇宙大作戦』で人を転送するのに失敗すると悲惨なことが起こるというのを思い出しました。
死んで転生するというのも非現実的極まりありませんが、生きたまま召喚するっていうのもなんか怖いというか、失敗して中途半端なところで終わったらどうなるんでしょう。ガンツで人体を転送してるのが途中で止まる感じでしょうか。怖すぎますね。
作中では、アヤメが「行きたくない」と意志を持つことで拒否することも出来てしまうみたいなので、より危なっかしいというか、怖い魔法です。魔法が相手に有効であれば、人の手だけを転送しちゃったり、わざと失敗させたら凄いことになりそうでもあります。
ところで、主人公たちが挑む魔術師同士の非公式大会【アルス・マグナ】というものがあるのですが、この名前を聞くとちゃ↑す!!を思い出します。多分まだ許されていないんでしょう。
私も公の場での発言には気をつけたいものです。
物語のテンポはすごくいいです。が、二人の抱えるトラウマというか、葛藤、心理描写はなにを言っているのかよく分かりませんでした。二人で勝手に納得して勝手に進みます。
そのわりに、キャラクター間の関係に関する描写が希薄なので、なぜ良好な関係が築けているのか不思議です。
また、中世ヨーロッパといいつつ、世界観がよく分かりません。まあアヤメちゃんの主観で中世ヨーロッパと言っているだけなので、別に気にすることでもないのでしょう。
個人的にこの作品の中で一番すごいと思うのは【言語理解】と呼ばれるバイリンガル魔法?だと思います。逆に、この魔法が世界観を曖昧にしている原因なのかもしれません。