化魂ムジナリズム(著:頂生崇深)
伝奇モノというジャンルは有名な物以外はわりと少ない気がするのですが、私が知らないだけで、やはりあるところにはあるんでしょう。
とは言っても、この手の作品は著者の技倆が試されるイメージがあります。
タイトルにもある化魂によって非日常に巻き込まれてしまった主人公の成長物語というところでしょうか。
ある程度覚悟が決まれば、特に訓練しなくても、化魂の力を存分に発揮できるようです。
設定もわかりやすく文章も巧みで、雰囲気がありとても読み進めやすいのですが、人間関係や主人公たちの性格、葛藤などは少しモヤっとするというか、はっきりしないところがあるように思います。
脅威に対する対処がほとんど受けの姿勢になりそうですので、この先も安心できない展開が続きそうです。
家守ちゃんかわいい。
塔京ソウルウィザーズ(著:愛染猫太郎)
一部で話題になった本作ですが、なんか買ってました。
多分表紙買いしたんだと思います。
設定は、スチームパンクというわけではありませんが、SFによくある忍者や侍的なものが蔓延る退廃的な近未来の日本と言った趣です。
やたら用語や固有名詞が頻出しますが、世界観は良く出来ており、それほど複雑といった印象は受けませんでした。
それよりも、登場人物が少ない割にみんなやけに真面目すぎるのか人間関係にとても緊張感があります。
人工的な知能が自我を持ち成長するというのは永遠のテーマじゃないかと思うわけですが、それが魂のない人間の器に宿るなんて、とてもロマンがあっていいなと思いました。
ところでこの作品、続き出てないんですね…。
完全な憶測でしかありませんが、巷で言われているように、著者にはなんら落ち度がないのに作品と著者の芽を潰されているのだとしたらとても悲しいことだと思います。
その原因がネットでの工作だなんて言ったら非常にくだらんっちゅーわけです。恥ずかしさで言えば杉某先生だって今もちゃんと活動してるわけですし、氏の所業に比べたら、たかがステマぐらいで騒ぎすぎなんですよ。
著者は名前を変えて活動している…なんてのはありそうですけどね。
三木氏独立しちゃったし、続巻に関してはわりと絶望感があると思います。
扉の魔術師の召喚契約 -その少女、最強につき-(著:空埜一樹)
異世界召喚、ダブル主人公モノでしょうか。
一流魔術師のロイ=シュトラスは自身の勝手な理由によりロイにとっての異世界である日本から雛菊アヤメを召喚。日本にアヤメを帰すために二人で力を合わせて戦う。そんな作品です。
地の文の人称が曖昧なためダブル主人公だと勝手に思いました。ココらへんは著者がどういった意図で執筆してるのかを読み取ることは出来なかったのですが、あまり深くは考えられていないような気もします。
…一度雛菊アヤメという人間を分解し、こちら側のモノとして少しずつ造り直しているということと同じであった…
P156
ロイが使う物質転移魔法についての解説を読んでいると、昔『宇宙大作戦』で人を転送するのに失敗すると悲惨なことが起こるというのを思い出しました。
死んで転生するというのも非現実的極まりありませんが、生きたまま召喚するっていうのもなんか怖いというか、失敗して中途半端なところで終わったらどうなるんでしょう。ガンツで人体を転送してるのが途中で止まる感じでしょうか。怖すぎますね。
作中では、アヤメが「行きたくない」と意志を持つことで拒否することも出来てしまうみたいなので、より危なっかしいというか、怖い魔法です。魔法が相手に有効であれば、人の手だけを転送しちゃったり、わざと失敗させたら凄いことになりそうでもあります。
ところで、主人公たちが挑む魔術師同士の非公式大会【アルス・マグナ】というものがあるのですが、この名前を聞くとちゃ↑す!!を思い出します。多分まだ許されていないんでしょう。
私も公の場での発言には気をつけたいものです。
物語のテンポはすごくいいです。が、二人の抱えるトラウマというか、葛藤、心理描写はなにを言っているのかよく分かりませんでした。二人で勝手に納得して勝手に進みます。
そのわりに、キャラクター間の関係に関する描写が希薄なので、なぜ良好な関係が築けているのか不思議です。
また、中世ヨーロッパといいつつ、世界観がよく分かりません。まあアヤメちゃんの主観で中世ヨーロッパと言っているだけなので、別に気にすることでもないのでしょう。
個人的にこの作品の中で一番すごいと思うのは【言語理解】と呼ばれるバイリンガル魔法?だと思います。逆に、この魔法が世界観を曖昧にしている原因なのかもしれません。
武装中学生2045 -夏-(著:岡本タクヤ)
ここからはしばらく、積んでいたものを消化していきたいと思います。
概ね面白い続き物を読んでいると、どうしても積んでいるものを無視して最新刊を買いに走ってしまうので、たとえいい掘り出し物があったとしても、我慢してひたすら家にあるものを読んでいきたい…です。
この作品はいわゆる、近未来ミリタリーモノという感じでしょうか。
2045と題されているのは、本編である『武装中学生』のスピンオフという位置づけのためのようです。
題名に年号が入っていると、ロマンを感じませんか?
『19XX』『STRIKERS1945』『G-STREAM G2020』『サイキックフォース2012』…なんかアーケードゲームしか知りませんね…。
小説では『1Q84』とか…?考えてみるとあまり思いつきませんでした。
多くの作品では時代設定が現実とリンクしていたり、重要な伏線であったりするわけですが、本作では元の作品の20年後という意味以外はあまりなさそうです。
本作では『国防教育法』が2022年に成立したとあります。
実際にどのような法律なのか、どういった運用がされているのかは作中からは判然としませんが、これを手にどこぞの国と争いを起こした、介入したとはなっていないようなので、平和を維持するために国防を担う人材を育成しようという法なのかもしれません。
物語のテンポはあまり良くないです。芝居がかった(これは意図したものでしょう)長いセリフ回しと、時代背景を細かく説明する地の文によって展開されていくため、内容のわりに物語が進んだ感じがしません。
不殺の誓いというわけでもないですけど、あんまりスカッとする展開でもなく、敵もそこまで悪いかって言われるとそうでもないような気もするので、カタルシスは余り感じられないでしょう。
主人公たちの戦いに対する精神面での成長に主眼が置かれている印象でした。
ただ、文章は読みやすく、とくに論理の破綻が見られたりもしないので、読んでて苦になることはないかと思います。
魔弾の王と戦姫14(著:川口士)
14巻です。
前回、(たしか)前々回から続く大きな戦いも今回で一応の決着をみせます。
大陸を縦横に駆け巡る戦いは戦記モノの醍醐味ですが、この戦いはほとんど正面突破と主人公と戦姫の技量頼みで、特に策らしい策もなかったかなあという印象です。
そんなことより、ついに女好きであることを認めてしまった主人公の今後が気になるところです。
各地で地道に好感度を稼ぎまくった結果でもあるわけですが、ものすごいハーレムを築きそうですね。各々が戦略級?の武神でもある戦姫たちをどう侍らすのか…。
主人公の体と心はひとつしかありませんからね。色々と大変そうです(他人ごと)。
一方で、主人公以外のところでもいろいろな思惑が動いているようですので、まだまだ、物語は続きそうです。