ようこそ実力至上主義の教室へ5(著:衣笠彰梧)
色々とあった夏休みも終わり、新学期も早々、体育祭でのガチンコ運動勝負に挑む生徒たちの活躍を描いた巻になります。
ガチンコとはいいますが、誰も彼も正々堂々という訳にはいかないのが面白いところです。
そういったわけで、今回は表と裏で主人公が大きく動くのも見どころかと思います。
また、ヒロイン的序列で言えば上位であるはずの堀北鈴音がやっと一皮むける(?)回でもあります。
主人公も太鼓判を押しているので、これからどんどん活躍……しますよね?
4.5巻において、主人公は次の特別試験で『退学者』を出す、と言っていましたが、なんと体育祭は試験扱いではありませんでした。
この流れだと櫛田ちゃんがドロップアウトさせられちゃうのかな? なんて考えたりもしますが、どうなるんでしょうね。
細いところに目を向けると、堀北鈴音は4.5巻で主人公と夏休みに話していた内容をすっかり忘れているようですが、まあこういったところに目を瞑っても面白い作品です。
どうもまだ物語は序盤らしいので、この先も長く楽しめそうです。
ようこそ実力至上主義の教室へ4.5(著:衣笠彰梧)
たまにありますよね、こういった.5が付いた巻。
でも大丈夫です。前回の試験のことに触れたり、これからの伏線のようなものも張られていたり、十分読み応えのある内容になっていると思います。
主人公主観の視点なのに、相変わらずその主人公自体がなにを考えているのかがわからない、そんなモヤモヤも一つの魅力でしょう。
次は物語が大きく動きそうなので楽しみです。
金色の文字使い―勇者四人に巻き込まれたユニークチート―(著:十本スイ)
またいつものあれでございます。なろう系異世界転移(異世界召喚)です。
どの要素がどこで初出なのかということを調べずに言えば、特に真新しい設定は……《文字魔法》という便利で分かりやすいチート要素でしょうか。
この作品を一言で表すと『淀みない』ということに尽きます。
別な言葉で言えば、都合がいいということなのですが、最初から最後まで同じペースで物語が進行するので、展開には驚くほど起伏がありません。
不快に感じることがあるとすれば、主人公の傲岸不遜な性格と独善的な言動でしょうか。
ただ、全編に渡って同じ態度を徹底して貫き通すところは好感が持てます。
ちょっとおもしろいと思うのは貨幣制度でしょうか。
ギルドで登録した際にもらえるカードにポイントのような形で溜まっていくのですが、これは魔法か何かを使ってビットコインみたいな仮想通貨的な発想で価値を担保している……のだとしたらなかなか斬新な設定ではないでしょうか。
ということで、結構好みの作品でした。
ゼロから始める魔法の書(著:虎走かける)
第20回電撃小説大賞、大賞作品です。存在は前から知っていましたが、なんていうか、タイトルとか表紙を見ると、別にいいかなって……。
でも、春にアニメ化するということで一応手にとってみました。
獣堕ち、と呼ばれる半人半獣の主人公が世間知らずの魔女と出会うお話です。
世界観や登場するキャラクターたち、魔法という設定、非常によくできていると思います。面白いです。
面白いんですけど、勧善懲悪が曖昧であり、起こった物事に対する責任の所在も不明瞭です。
まあ、技術が悪いことに利用されるか良いことに利用されるかは、その人次第というところなんでしょう。
基本、主人公の主観で物語が語られていくため、他のキャラクターの内面が読みづらいのですが、そういったモヤっとする人間関係が一つの魅力でしょう。
強いわりに小心者の主人公の内面についてもよく描写できていると思います。
物語は二転三転と目まぐるしく急転していくわけですが、オチはしっかりしていて、主人公とゼロの旅の目的も出来て……といように上手いことまとまっているのは素晴らしいことです。
ワールド・ティーチャー異世界式教育エージェント5(著:ネコ光一)
表紙にも描いてあるエルフが久々に登場しますが、故郷を出奔するというだけで紙面では小さい扱いなのでちょっとがっかりでした。
学園を卒業した主人公一行が特注の特殊な馬車を引く馬……というか狼を仲間にしたり、縁を切った実の親と異母兄弟をこらしめたり、かつての従者たちを訪ねたりするお話です。
主人公と敵対する人たちの徹底的な愚かしさや、恋愛事情がまったく進展しないところなど4巻とほぼ変わりありません。
エルフと再び出会うところくらいまでは読もうかと思っています。